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楓音で過ごす記念日ストーリー第二話

結婚記念の旅行一緒に祝える人がいる。ただ、それだけで記念日になる。

「ただいま」と言ってリビングに入ると、「おかえり」と妻が言った。当たり前の毎日。昔と変わったといえば、息子が高校生に、娘が中学生になってからは家族全員で出かけることが減ったこと。まそれも仕方ない。スーツを脱いでダイニングに行くと、娘が急いで自分の部屋へ上がっていく。なんだよ、、お父さんキラーイつてお年頃か?少し寂しく思いながら食卓につく。立ち上がる湯気と愛用の有田焼のシャンパングラスを眺めて、あぁ今日も疲れた、とごくり。うん、旨い。

ふと白い封筒が目に入った。「楓音…あぁ、あの旅館」と右手にある有田焼を眺める。俺が有田焼ファンになったのは、実はこの宿がきっかけだ。何度か行っているが、いつも新鮮な食材を丁寧に盛り付けた、その器までもが印象的で。「結婚記念日ですねって、それ届いたの」そう妻に言われて思い出し年を数える。「あ、ちょうど20年だ」思わず声にして、瞬間、反省してしまった。

そういえば結婚10年の時も妻に「スイート10」なんて言われて…でも何もしなかった。10年前がついこの間のよう。でも息子は小学生で野球に夢中だったし、娘はパパ~!と抱きついてくれた。今はすっかり大人になってさ。俺だけ相変わらず仕事して、酒飲んで、なーんにも変わっちゃいないんじゃないのか?10年前の記念日も何もしなかった。しかし、照れるだろう、そういうの…。何していいのかもわからないし。そんなことを考えながら手紙に目を向ける。この宿にはずっと変わらないものがあるんだろうな。あの旨い料理も、女将さんの笑顔も、そして…ん?記念日プラン?ワインにラベル?中身を読み進めていくうちに「これなら俺にもできるかも」と思い始めた。

俺はあんまり器用じゃない。妻が喜ぶことを、どんなふうにしたらいいのかなんてわからない。だから10年の記念日も気づかないふりしてた。「楓音がお手伝いします」 え、本当ですか?と今すぐ電話をかけたい衝動に駆られたが、そこはぐっとこらえて。「ご飯おかわり」と妻をキッチンに向けた。そのすきにスケジュール帳をチェックして、俺はその空欄に『楓音』と書き込む。明日の朝、会社に着く前に電話をして相談してみようかな…。こんな俺でも妻の喜ぶ顔はみたいんです。少し、手伝ってもらえますか?

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