menu

楓音で過ごす記念日ストーリー第三話

誕生日のお祝い旅行誰にとっても、幾つになってもやっぱり1年に一度の特別な日

買い物をして自宅のドアを開こうとしたら、薄桃色の封筒が目に入った。買い物袋を片手にまとめ、私は封筒を取る。「あぁ、楓音さんだ」と、すぐにあの露天風呂から眺めた青空を思い出した。そしてあの時食べた新鮮な鯵を思い出して、買い物袋に入った鮭を想った。私に料理の才能がもっとあれば…などと言っても仕方ない。そのまま夕食の支度をし始めたら、封筒はダイニングテーブルの上へ。「あれ?ここって前にいった旅館?お前もうすぐ誕生日なんだっけ」夕食をテーブルに並べると、旦那がやってきて言った。

「そうよ。私来月、誕生日なの」アピールしながら鮭のホイル焼きを運ぶと、旦那はくんくん、と鼻を動かして「お、いいにおい。でもさ、あそこの料理はうまかったよなー」…それはそうだけど、私の料理を目の前にして、何を言うか。そんな私をよそに、旦那はビールを飲みながら封筒の中身を取り出す。私は他のお皿を並べ終わると、自分のグラスを持って向いに座った。

「へえ…」ホイル焼きには手を動かすだけで、ちっとも見ていない。ビールを飲む時だけは、グラスの位置を確認して、また手元に目を戻す。「なぁ、花束ってもらって嬉しいのか?」「当たり前じゃない。花屋の私に何を言うのよ」「ケーキとどっちが嬉しい?」「…どっちも…」「それじゃあ、選べないよ」え?「とちぎ和牛って前に食べたよな」「そう、ひらがなのとちぎ、ね」栃木県の和牛の中でもひらがな表記のとちぎ和牛は、特別なものだと以前聞いた。自分で作った料理を食べながら、前に食べたとちぎ和牛の溶岩焼を思い出す。

柔らかくて、とろけて…美味しかったなぁ…。「とちぎ和牛の、霜降りトロ握りだって」口に入れていた鮭がびっくりして生き返るかと思う勢いで「食べたい!」自分でも驚くくらいの声が出ていた。旦那が大笑いしながら、ビールを口に運ぶ。なんでそんなに笑ってるの?「なぁ、いつも食事作ってくれるのが当たり前だけどさ。誕生日くらいは旨いもの食べにいこうか」と鮭をぱくりと口に入れて。

「お前も花屋のバイト、休み取っておけよ」と赤いペンを持って立ち上がり、カレンダーに『楓音』と書き加えた。えええ?本当?店長!私、来月の金曜はお休みもらいます!

記念日プランで予約する